最後に。私の「ものがたり」の創作は、まだまだ始まったばかりです。もっともっと研究し、もっともっと深め、もっともっと広がり、もっともっと本格的に書きたい。私にとって、「ものがたり」の面白さは、泉鏡花が一番で、「ものがたり」のおかしさは、筒井康隆が一番です。筒井康隆さん、江戸川乱歩に見出された後、各方面からボロクソに言われながらも、ボロクソに言い返し、よくぞ「ナンセンスSF」、「ナンセンスギャグSF」を、社会に確立して下さった。筒井作品を見ると、「小説とは、何でもありだ」と勇気付けられます。

 また、戯曲では、なんと言っても井上ひさしが一番です。普通の戯曲家は、十年でピークが過ぎますが、井上ひさしさんは、三十五年以上ピークが続いています。それだけ、恐るべき勉強をしておられるのです。また、ショートショートは阿刀田高さんが一番で、人間性のすばらしさが滲み出る、すがすがしい文体が好きです。その意味で、最近の芥川賞作家では、川上弘美さんが、文体の調べや気の良さ、「ものがたり」の面白さは群を抜いてます。だから、大好きです。

 また、最近の直木賞作家では、多くの体験から滲み出る、温かい文体と心憎い描写力、競馬好きの愉快な性質。そして、読後感が気持ちのいい浅田次郎が好きです。スケールが小さいとか、内容が浅いと言われますが、全く気になりません。どの作品も、皆に愛されるでしょう。

 それでも、そのスケールと多様性、その詩心と文体、そして、優れた頭脳と天才性は、三島由紀夫の右に出る人はいません。ああ、なんで、あんなに早く死んでしまったんだ。あの死に至る理由は、良くわかるけど、日本文学の宝だったのに。特に、あのメチャメチャ面白いエッセー、緻密な評論を、もっと読ませて欲しかったのに……。

 しかし、よしもとばなな 、村上春樹、中上健次、開高健、安部公房、みんないい作品書くなあ。どの作家も、みんな偉い。「ものがたり」の魅力に取り憑かれた私ですが、優れた作品を生み続ける作家は、ジャンルを越えて本当に偉い。尊敬できます。自分が作り始めて、文学の味わいが豊かになるとともに、そのことを、つくづく実感する今日この頃です。

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